IPL(光)治療をやめた場合の肌への影響

IPL(光)治療は、1990年代から皮膚治療に用いられるようになりましたが、1990年代後半に美容皮膚治療でも注目され、2000年頃から様々な臨床効果が報告されている治療方法です。Intense Pulsed Lightという広い波長をもつエネルギーがメラニンやヘモグロビンなどに作用し、皮膚の若返り(skin rejuvenation)が期待できるといわれています。

しかし、1回の施術で劇的に皮膚の若返りができるというわけではなく、効果を実感するには肌悩みに併せた施術を複数回受けることが推奨されています。今回、IPL治療を途中でやめた場合の定義を、推奨されている回数の途中でやめた場合として解説します。

IPLの施術を途中でやめてしまった場合、皮膚が極端に老化してしまうなどと噂をされていますが、この噂は正しくありません。IPLの施術を途中でやめた場合、皮膚にはどのような影響が出るのかを正しく知って、不安なく施術を受けましょう。

医療機関でおこなう肌へのIPL治療

IPL治療のメカニズム

IPL(Intense Pulsed Light)は、電磁波の1種です。電磁波は、波長の違いによって、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、高周波のように分類されています。波長とは、山と谷を繰り返す、波の山から山(もしくは谷から谷)の長さのことで、ナノメートル(nm)という単位で表されます。

波長が長くなるほど皮膚の深くまでIPLのエネルギーを届けることができます。IPLのエネルギーはメラニンやヘモグロビンといったターゲットとなる物質に吸収されて熱エネルギーに変換されます。変換された熱エネルギーによって、ターゲットとなる物質を損傷・変性させることができます。これを熱作用と呼んでいます。

美容医療で使われるIPLの波長は約500nm～1200nmmあたりで、メラニンやヘモグロビンといったターゲットとなる物質にIPLのエネルギーを吸収させるために、不要な波長をカットして照射します。IPLの治療器によって、ハンドピース内にフィルターが埋め込まれていてカットできる波長が1種類のものと、フィルターが着脱可能になっていて数種類のフィルターを用いることによってカットできる波長が複数あるものがあります。

IPL治療では波長だけでなく、パルス幅と出力も重要になります。

パルス幅とは、IPLを照射する1発あたりの長さのことで、1000分の1秒にあたるms(ミリ秒)単位で表されます。パルス幅が短くなるほど瞬間的に発生する熱エネルギー(ピークパワー)が高くなって、ターゲットの物質への熱作用が強くなります。

IPLの出力は、J(ジュール)/㎠という単位で表されますが、これは一平方センチメートルあたりに照射されるIPLのエネルギーの密度を意味しています。IPLの出力が高いほど単位面積あたりに照射されるエネルギーの密度が高くなって、ターゲットの物質への熱作用が強くなります。

IPL治療で効果が期待できる肌悩み

メラニンが主な原因の肌悩み

• シミ
• そばかす
• 肝斑(かんぱん)
• 炎症後色素沈着

シミ・そばかす・肝斑は光老化と呼ばれていて、主に紫外線により患部の色が濃くなります。IPL治療では、色の原因であるメラニンを熱作用で損傷させて体外に排出することによって、患部の色を薄くする・消す効果が期待できます。

ただし、肝斑は紫外線だけでなく、肌をこすったり、美容皮膚科で刺激の強い施術をおこなうと色が濃くなることが分かっています。そのため、IPL治療の際も強い刺激を与えないように出力を調整しながら施術をする必要があります。

炎症後色素沈着とは、皮膚が傷ついて治った後の患部が、シミのように色素沈着してしまうことをいいます。ニキビや擦り傷の後に発生してしまうことが知られています。また、美容皮膚科でレーザーなど、刺激の強い施術をおこなうことでも発生する可能性があります。皮膚のバリア機能が低下している傷跡に発生するため、刺激の強い施術をおこなうと皮膚への損傷が大きくなり、症状が悪化する可能性があります。患部に必要以上の刺激を与えないように、IPL治療の際は出力を弱くして慎重に施術をおこないます。

ヘモグロビンが主な原因の肌悩み

• 顔の赤み
• ニキビとは違う赤い皮疹
• 毛細血管が表面から見える
• 酒皶(しゅさ)

上の4種類の肌悩みは、血液中に含まれる赤血球の赤い色素であるヘモグロビンが主な原因です。毛細血管の拡張や増殖によりヘモグロビンが増加して、目に見える症状となります。IPL治療でヘモグロビンに熱作用を起こし、血管を収縮させることで改善が目指せます。

酒皶(しゅさ)は、毛細血管の拡張や増殖で顔が赤くなるだけでなく、小さな吹き出物も混合して皮膚に発生します。酒皶は症状により4つの段階に分かれていて、IPL治療で効果が期待できるのは1期の酒皶です。

1期：頬と鼻の皮膚が赤くなり、チクチクすることがあります。酒皶前駆期(しゅさぜんくき)とも呼ばれています。
2期：皮膚が赤く腫れたようになって、細い血管が表皮のすぐ下に見える状態です。血管期とも呼ばれています。
3期：炎症期とも呼ばれていて、皮膚の赤みだけでなく、小さな吹き出物が発生した状態です。吹き出物は少量の膿を含む場合もあります。
4期：鼻の周囲の皮膚が厚くなり、赤くなって団子鼻のように見える状態です。進行期とも呼ばれていて、改善するには金属性の器具で皮膚の外側の層を削り取る処置や、過剰な組織を削り取るための手術をおこなうといった施術が必要になります。

コラーゲンやエラスチンの減少が主な原因の肌悩み

• 毛穴の開き
• 肌の弾力の低下
• キメの乱れ
• シワ(ごく浅いもの)

上のような肌悩みの改善はSkin Rejuvenation(スキンリジュビネーション)と呼ばれています。Skin Rejuvenationを日本語でいうと｢皮膚の若返り｣です。

毛穴の開き、肌の弾力の低下、キメの乱れ、シワ(ごく浅いもの)は、皮膚を支える役割を果たすタンパク質であるコラーゲンやエラスチンの減少が主な原因です。また、偏った食生活や睡眠不足といった生活習慣によってターンオーバーの周期が乱れることも原因のひとつです。

IPL治療では、コラーゲンを生成する機能がある真皮への熱作用でコラーゲンの生成を促進させることができる上、表皮への熱作用でターンオーバーも同時に促進させることができるので、肌悩みの改善が期待できます。

IPL治療を途中でやめた場合のデメリット

IPL治療は、レーザーなどの他のPDT(光線力学的療法)よりも、ターゲットの物質に与える熱作用が弱いとされていて、１回の施術の効果は小さく複数回の施術が推奨されています。肌悩みの種類にもよりますが、3週間~4週間ごとに5回前後の施術が推奨されていて、回数を重ねるほど、施術の効果が高くなる傾向にあります。

ただし、3週間~4週間ごとに施術する場合、連続10回程度の施術で効果のピークに達するという臨床結果が報告されています。3週間~4週間ごとの施術で、肌悩みに対する推奨回数を超えた場合は、次の施術までの期間を3ヵ月~半年あけて再度施術をおこなうことで、皮膚のメンテナンス効果が期待できるといわれています。

Skin Rejuvenation、シミ、そばかすの施術を途中でやめた場合のデメリット

Skin Rejuvenation・シミ・そばかすは、3週間~4週間ごとに3回～5回の施術が推奨されています。

施術を途中でやめた場合は、シミやそばかすが薄くなる・消える、毛穴が引き締まる・肌に弾力が出るなど期待する効果が十分に得られない可能性が高くなります。

肝斑の施術を途中でやめた場合のデメリット

肝斑は、肌をこすったり、美容皮膚科の施術など強い刺激を受けると色が濃くなってしまうので、もともとは外用薬・内服薬を用いる治療が推奨されていました。しかし、IPLの治療器が進化することで、ごく弱い出力で施術をおこなうことができるようになったため、IPL治療も用いられるようになりました。

ただし、IPL治療だけで肝斑の改善を目指すわけではなく、外用薬・内服薬と併用する治療が推奨されています。外用薬・内服薬と併用してIPL治療をする場合、3回程度のIPL照射で肝斑が薄くなる・消えるなどの改善が期待できます。

IPL治療を途中でやめた場合、肝斑の改善に時間がかかってしまうデメリットが発生します。

炎症後色素沈着の施術を途中でやめた場合のデメリット

炎症後色素沈着は肝斑と同様に、外用薬・内服薬の治療が推奨されていましたが、ごく弱い出力でIPLの施術をおこなうことで、色素沈着が薄くなる効果が期待できるようになりました。

IPLの施術中も外用薬・内服薬を併用することで相乗効果が期待でき、一方だけの治療をおこなうよりも短期間で炎症後色素沈着を改善できるといわれています。

皮膚の損傷程度により、波長やパルス幅、出力を調整して慎重に施術をする必要があるので、推奨施術回数には個人差があります。医師の診断により推奨される施術回数が決定されますが、途中でやめてしまうと期待どおりに色素沈着が薄くならない可能性が高くなります。

また、IPL治療をやめて外用薬・内服薬のみで治療を続ける場合は、改善までの期間が長くなる可能性も高まります。

複数回の施術が推奨されているIPL治療のメリット

ダウンタイムがほとんどない

IPL治療は他のPDTと比べて皮膚に与える熱作用が小さいため、皮膚に与えるダメージが低く、ダウンタイムがほとんどありません。施術直後からメイクも可能です。

熱傷や炎症後色素沈着などのリスクが低い

IPLを含むPDTは熱作用により肌悩みを改善に導きますが、熱作用が強いと施術幹部の周りの皮膚を傷つけてしまうリスクがあります。

IPL治療は出力を弱く照射できるため、熱作用による熱傷や炎症後色素沈着などのリスクが他のPDTより低くなるという臨床結果が報告されています。

他の施術と併用することで相乗効果が期待できる

IPL治療は熱作用が他のPDTより弱いので、治療後の皮膚に大きな変化を生じません。そのため、ピーリングやイオン導入、レーザー治療、内服薬・外用薬といった施術を併用することで、肌悩みに対して相乗効果が期待できます。

肌悩みに対して複合的な作用が期待できる

PDTの治療では、ほとんどの施術が一種類の波長を用いて照射をおこないます。そのため、改善が期待できる肌悩みは一種類のみであることがほとんどです。

しかし、IPLは複数の波長を用いて施術をおこなうことができるため、複数の肌悩みを同時に改善に導くことができます。例えば、シミの改善を目的として施術をおこなった場合、キメを整えたり、肌のハリの改善する効果も同時に期待できます。

肌悩みへの施術方法を迷ったら医療機関へ相談

肌悩みを改善する施術はIPL治療の他にも様々な種類があります。施術によって、料金や改善までの期間、リスクが異なるので、どの施術をおこなうべきか決めかねてしまう方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

どの施術をすればいいのか分からなくなってしまった場合、美容皮膚医療に特化した医療機関に相談することで、肌の状態を診察した上で、安く済ませたい、早く済ませたいなど希望に沿って最適な施術を提案をしてもらえます。