ほうれい線の原因と進行状況ごとの施術方法、スレッドリフトの効果

年齢とともに目立ってくるほうれい線。メイクで隠すことがむずかしいので多くの人が悩む部位ですが、実はほうれい線ができる原因はさまざまで、症状の進行状況によって適している治療方法も異なります。ほうれい線の状態によって異なる治療の種類を知って、自分に合った施術をうけましょう。

シワが深く刻まれてしまった重度のほうれい線を改善する方法に、糸(スレッド)を皮膚の下に入れて頬のたるみを引き上げるスレッドリフト(糸リフト)という治療がありますが、スレッドリフトはほうれい線の状態が線というよりも頬のたるみによって影ができている人に向いている治療方法です。

スレッドリフトという名称は糸によるリフトアップ法の総称なので、スレッドリフトのなかにもさまざまな種類があります。スレッドリフトのなかでもどの種類がほうれい線の改善に効果があるのか知っておくことで、より満足いく結果が得られます。

老けて見えてしまうほうれい線の原因

ほうれい線とは、鼻の両わきから口角に向かってはいるシワのことで、欧米ではsmile linesと呼ばれているように、笑ったときにできる表情ジワです。笑いジワ自体はわるいものではありませんが、ほうれい線が目立つと老けて見える要因になるので、気になりますよね。

年齢とともに肌の弾力が低下してくると表情ジワが戻りにくくなり、徐々に真顔のときでも目立つ深いシワ(ほうれい線)へと進行していきます。

ほうれい線は口周りのシワなので、シワ対策に力を入れて改善しようと考えがちですが、ほうれい線の原因はさまざまです。

ほうれい線の原因は、紫外線によるダメージや乾燥、表情の癖などのほか、年齢とともに骨も痩せるので顔の骨の老化や脂肪の減少、筋肉の衰えによって頬がたるむなど、多くの場合で複数の要因が組み合わさっています。

ほうれい線ができる原因

乾燥

皮膚に十分な保湿力があり、シワを押し返す弾力やハリが備わっていれば、笑ったとき以外にほうれい線が目立つことはありませんが、乾燥肌だと皮膚の弾力が失われ、シワがどんどん深くなってほうれい線の溝を形成してしまいます。

紫外線

紫外線を浴びることによって、皮膚の弾力やハリを保つためのコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを生成している真皮層がダメージを受けてしまいます。

ヒトの皮膚は、外側から表皮層、真皮層、皮下組織(脂肪)の３層構造になっていますが、真皮層は、線維状のタンパク質である「コラーゲン」が約70％を占めていて、その間を「ヒアルロン酸」に代表されるゼリー状の物質が、水分を抱えながら満たしています。これに「エラスチン」という線維状のタンパク質も加わって、肌に弾力を与えているのです。

紫外線のなかでも波長の長いUV-A波は真皮層に届いて、肌のハリや弾力のもとであるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを減少させてしまい、ほうれい線を含むあらゆるシワの原因となります。

自己流スキンケア

洗顔時に肌を強い力でこすってしまうと肌表面に必要以上の刺激を与えてしまって皮膚を守っている表皮層のダメージにつながり、乾燥の原因になることがあります。

肌のうるおいは皮膚の表面を覆っている皮脂膜と表皮層によって守られています。この皮脂膜と表皮層はわずか0.2～0.3ミリの厚さ。そのため、洗顔時に顔をゴシゴシ洗ってしまうと、肌が傷つきうるおいが失われやすくなってしまいます。 洗顔する時は強い力でこすらず、洗顔料をよく泡立てて優しくなでるように洗いましょう。

加齢

若い肌は真皮層に蓄えられたコラーゲンやエラスチンなどに弾力があり、肌全体にハリがあるため頬をしっかり支えていますが、年齢を重ねると真皮層のコラーゲンやエラスチンなどの量が減少するため、頬を支えられなくなってたるみが生じ、ほうれい線の溝が深くなってしまいます。皮下組織と骨をつないでいる表情筋や筋膜の衰えも、たるみによるほうれい線の原因です。

また、真皮層に蓄えられるヒアルロン酸は、細胞と細胞の間のクッションのような役目で細胞同士をつないでいる保水成分ですが、20代をピークに加齢とともに減少するといわれています。加齢にともないヒアルロン酸が減ってしまうことも、乾燥やシワを引き起こす原因の一つです。

ほうれい線の状態・症状別にみる治療方法

ほうれい線は個人の症状にあった適切な治療をおこなうことが大切です。症状の進行状況によってそれぞれに適した治療方法を紹介します。

	軽度：口元の表情じわ	中度：はっきりとした線	重度：たるみによる影
ほうれい線の状態	表情によってほうれい線ができる状態	真顔でもほうれい線が目立つ状態	線というよりも頬のたるみによって影ができている状態
向いている治療法	照射治療	注入治療	スレッドリフト

笑ったときなど、表情によってほうれい線ができる状態はまだ軽度です。照射治療で肌質を改善し、ハリと弾力のある肌にすることによってほうれい線を目立たなくすることができます。ほうれい線が深くなる前に、予防として軽度のうちから照射治療を受けるなどケアをしておくことが大切です。

笑ったとき以外、真顔でもほうれい線が目立つ場合は、ヒアルロン酸注入などの注入治療でほうれい線の溝を持ち上げて、ボリュームを与えることで改善できます。即効性があり、手軽に一定の期間、ほうれい線を目立たなくすることができます。

線というよりも、頬のたるみによって影ができている重度のほうれい線にはスレッドリフトが向いています。スレッドリフトは、たるみの気になる部位に糸を挿入して皮膚組織を引き上げて、ほうれい線を改善します。メスを使って皮膚を切開するフェイスリフト手術よりも、腫れやむくみといったダウンタイムが少ない治療方法です。

では、ほうれい線の進行状況によって異なる3つの治療方法をくわしくみていきましょう。

表情によってできる軽度のほうれい線改善には照射治療

笑ったときなど、表情によってほうれい線ができるような軽度のほうれい線にはハリやツヤをもたらす美肌効果の高い照射治療がおすすめです。施術後にメイクも可能なので気軽に試したい人に向いています。

照射治療は肌に熱刺激を加え引き締め効果を狙います。メスを使用したり糸を挿入するなどの皮膚を傷つけるステップがないので、痛みやダウンタイムが軽度です。そのため、ほうれい線の改善効果もおだやかで、症状が軽い場合の治療方法といえます。

皮膚のなかでコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを生成している真皮層に熱刺激を加えると、熱でダメージを受けた部分と、その周辺を修復しようとする創傷治癒力が働きます。肌にハリとみずみずしさを保つためのコラーゲンや、エラスチンの蓄積を促すことができるので、肌のハリ、毛穴の縮小、リフトアップ効果が期待できます。

照射治療はこんな方におすすめ

• 笑ったときなど表情によってほうれい線ができる
• 小ジワも目立つ
• 肌全体を引き締めたい
• ハリやツヤがない
• 切らない治療がいい
• 注射が苦手

照射治療の種類

• サーマクール(ラジオ波、RF、高周波)
• ウルセラ、ダブロ(超音波、HIFU)
• スキンタイト(近赤外線)
• ジェネシス(レーザー)

照射治療の効果の持続期間

痛みやダウンタイムが少ない照射によるほうれい線治療は効果がマイルドです。照射治療の効果はマシンの種類にもよりますが、数カ月後から徐々にあらわれはじめます。照射治療でほうれい線改善の効果を実感するためには定期的な治療の継続が必要とされています。

真顔でも消えない中度のほうれい線改善には注入治療

笑ったとき以外、真顔でも線が目立つような中度のほうれい線にはヒアルロン酸注入などの注入治療がおすすめです。注入によるほうれい線治療では、加齢により減ってしまったヒアルロン酸やコラーゲンを注入して、皮下組織のボリュームを補い、ほうれい線の溝を埋めていきます。

注入治療はこんな方におすすめ

• 真顔でもほうれい線が目立つ
• 手軽にほうれい線を目立たなくしたい
• すぐに効果を感じたい
• 切らない治療がいい

注入治療の種類

• ヒアルロン酸注入
• コラーゲン注入
• 脂肪溶解注射

注入治療の効果の持続期間

注入によるほうれい線の治療では、ヒアルロン酸などを注入して溝を埋めるので、即効性があります。施術後すぐに効果を実感できることがメリットです。施術時間も15分～30分程度と短く施術後のメイクも可能で、ダウンタイムも比較的軽いので、手軽におこなえるのも魅力です。

ただし、体内に吸収される薬剤を注入するため、薬剤が体内で分解されると元の状態へと戻ります。そのため効果の持続に物足りなさを感じる方もいるようです。

効果の持続期間は注入する薬剤のメーカーや種類、個人差によって異なりますが、数カ月～1年ほどです。ほうれい線を目立たなくする効果を保つには適切なタイミングで継続的にタッチアップ(再注入)をすることが必要です。

たるみによる重度のほうれい線改善にはスレッドリフト

線というよりも、頬のたるみによって影ができている重度のほうれい線にはスレッドリフトが向いています。頬がたるむことによってほうれい線の上に脂肪がたまり、ほうれい線をより深い窪みにしている場合、頬のたるみを改善することでほうれい線の解消につながるのです。

スレッドリフトとは、糸(スレッド)を皮膚の下に入れて顔や首元のたるみを引き上げる治療方法で、たるみが原因のほうれい線の改善に即効性があります。

リフトアップには、メスを使って切開するフェイスリフト手術がもっとも効果が高いといわれていますが、腫れやむくみといったダウンタイムが大きいことから、身体へのダメージを少なくし、ダウンタイムも短いとされるスレッドリフトが考案されました。スレッドリフトは細い針を使って糸を皮膚のなかに通すので身体への負担が少なくてすみます。

スレッドリフトは、加齢によって下へと移動してしまった皮下組織を糸で引き上げるだけでなく、挿入した糸のまわりで皮膚組織の再生の働きが起こることでコラーゲンやエラスチンの生成が活性化されて、小ジワの改善、肌のハリや弾力、毛穴の引き締めといった効果も期待できます。

肌のハリや弾力がなく皮下脂肪が下垂して頬がこけている場合や、加齢によって骨が痩せたりしてほうれい線が目立っている場合、スレッドリフトとともにヒアルロン酸注入を併用します。

また、頬の皮下脂肪が多くてたるみが生じている場合は、スレッドリフトの前に脂肪溶解注射で脂肪の量を減らす方法をとります。

スレッドリフトは単独でも効果はありますが、個人のほうれい線の状態によっては照射治療や注入治療と組み合わせて併用することも有効です。

スレッドリフトはこんな方におすすめ

• たるみによる影ができている
• ほうれい線が深い
• 頬のたるみが気になる
• すぐに効果を感じたい
• 効果を長持ちさせたい
• ハリやツヤがほしい
• 切らない治療がいい

ほうれい線改善でスレッドリフトをうけた場合の注意点

ほうれい線の改善を目的にスレッドリフトをうけた場合、施術後1カ月はあまり大きな口を開けないようにして、食事をする際にも気をつけてください。顔のマッサージも施術後1カ月程度は避けてください。

スレッドリフトのダウンタイムとリスク

スレッドリフトを施術した当日は激しい運動や飲酒をさけ、施術後のセルフケアなどはドクターの指示に従うことが大切です。

• つっぱり感やひきつれの感覚が生じる場合がありますが、違和感は1週間ほどで解消します
• 針の挿入による腫れや内出血、赤みが生じる場合がありますが、２週間ほどで解消します
• 針跡は数日で消えます(施術当日はテープで保護します)
• 皮膚の組織をひきあげるひずみで凸凹が生じることがありますが、1カ月ほどで馴染みます
• メイク、洗顔、シャワーは 翌日から可能、入浴は腫れが引いてから可能です

ごくまれに、炎症や感染症をおこすことがあります。痛みやかゆみ、痺れが生じたり、糸の挿入口に膿があらわれた場合は炎症や感染症などの可能性がありますので、すぐに医療機関にご相談ください。

KIREI

ほうれい線対策でよりよい効果を得る方法

年齢とともに肌の弾力が低下してくると表情ジワが戻りにくくなって、徐々に深いほうれい線へと進行していきます。

ほうれい線の状態が軽いうちから、保湿を怠らないなどのセルフケアとともに、必要に応じて照射治療や注入治療などの対策をしておくことが大切ですが、頬のたるみによって影を形成しているような深いほうれい線はスレッドリフトで改善することが可能です。

人によってほうれい線の状態はさまざまで、一人ひとり異なる骨格や顔の脂肪のつき方などのバランスをみて施術方法を見極める必要があります。よりよい効果を得るためには、さまざまなほうれい線改善の治療メニューがある美容外科を選んでカウンセリングをうけましょう。